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2008年3月22日

橋下知事の図書館観

 諸施設の「ゼロベースでの見直し」を言いつつ図書館は残すという橋下大阪府知事の図書館政策について、 以前のエントリーで
>>「図書館だけは残す」その理由の由来次第では、なんだか変なことになりそうです。
http://igandou.txt-nifty.com/igandou/2008/02/post_8b24.html
 と記していたことのその後が見えて来始めました。橋下知事の図書館政策の中味はどうも貧弱です。

 20日に国際児童文学館を知事が視察して府立図書館との統合を示唆した記事、例えば

橋下知事、国際児童文学館を視察「図書館と統合を」(朝日 2008年03月20日20時31分)
http://www.asahi.com/national/update/0320/OSK200803200049.html

 が注目されているようですが、むしろ次の記事にあるように「府立女性総合センター(ドーンセンター) などの資料収集事業についても府立図書館に統合することを検討しており、6月をメドに結論を出す。」 というところも併せて注目すべきでしょう。つまり「とにかく施設の削減が不可欠であり、機能の違いはともかく、 本を扱うのは全部図書館ということでいいでしょ>というのが、橋下知事の図書館政策の落としどころであり中味だということのようです。

橋下知事、「府立図書館を集約」──児童文学館など対象(日経ネット関西版 2008/03/21配信)
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news003271.html

 大阪府立国際児童文学館というのは、老生も何度か利用してますけれど、あれは図書館と言うより、児童書の博物館・ 研究施設として出来ています。1Fが子どもが利用する閲覧室ですが、蔵書のほとんどは大人だけが利用出来る設定になってますので、 1Fの子どもの閲覧部分は、たとえて言えば教育大学が付属の小学校を持っているようなもので、 研究者が児童書についての子どもの反応などのデータを得たり、仮説を実験する場なのですよね。 建物もそういう前提で出来ているところですので、それを施設統合の必要から中味(機能)だけ他へ移せというのはかなり乱暴な話ですし、 実際問題として現在の府立図書館2館のどこに70万点の蔵書を箱詰め状態ではなくすぐに活用できる形で配置できるのかという話も出てきます。 ただこれは、必要なスペース(今後の増加部分も含めて)が手当され、専門図書館としての研究専門員の配置が従前通りにされるのなら、 財団をなくしてもその機能だけを保全することができるとも言えます。

 施設側の<図書館になると、児童書の寄贈が受けられない>という趣旨の発言は言葉足らず(*)で、 たしかに誤解を招きやすいものですけれど、ここが児童書の研究者の個人蔵書12万冊の寄贈を核にして立ち上がっており、 児童書の研究機関という位置づけで出版社との信頼関係を築き新刊児童書の寄贈も受けてきたし、 個人所有の稀覯書の寄贈も受けられてきたという経緯からすると、 文学館だから図書館だからと言う看板の話ではなく<理事者側の運営の姿勢に疑問が生じることで、 これまで受けられてきた寄贈も受けられなくなるだろう>という趣旨として理解できます。実際の話 「本だから図書館に集約でいいじゃないですか。どこが悪いんですか」と言われたら、これまで新刊を寄贈し続けてきた児童書専門の出版社も、 大阪府とは距離を置きたくなるんじゃないでしょうか。

* この「言葉足らず」の原因がご本人の言葉足らずなのか、 記者の聞き取り理解力不足なのか、デスクの整理の仕方によるものかはわからないんですけど。

 ドーンセンターの情報ライブラリー事業(図書館機能)については、この施設の女性の駆け込み寺(セーフティネット) 機能と連携することで成り立っているわけで、相談機能と連携しないのならその存在価値は著しく下がるでしょうし、 府立2館側としても蔵書内容としてはかなり重複しているものをあえて受け入れるメリットはないように思います。(え?  重複していないものだけ受け入れて後は廃棄すればいいって? まぁ事務処理としてはそうなんやけどね。 ドーンセンターにあるからこそ活用できている蔵書を重複チェックで「処理」するのって、単なるお役所仕事でしょう?)

 「本はとにかく図書館へ」ってのは、図書館からすると有り難いスローガンに思えるわけですが、上記の事例については、 どうも本を活かせない仕組み、本を通して人が活きない仕組みとなるように思えます。

 ドーンセンターについては、そのソフト(女性のセーフティネットとしての相談機能)は誰もが評価していると思うのですが (もちろんこういう施設があること自体に反感を持つグループもありますが)、ただ施設ができた時期がバブルのまっただ中だったせいか、 今は使われていない屋内プールとか、何ともバブリーな部分もある施設ではあります。ただソフトを残すということで言えば、情報ライブラリー (女性問題専門図書館)とセットで残すことでより効果が上がってきているでしょうし、 情報ライブラリーの相談機能との連携ということで言えば、情報ライブラリーの蔵書を府立2館に移してそこを案内しても、 実際には活用されないということになるでしょう。

 財政再建のために施設の統廃合は不可避であるとして、必要な機能をどう残すのかという点でみれば、本の使われ方(機能) を無視しての「本のことは図書館へ集約」は弊害が多いと言わざるを得ないですよね。

 

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