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2008年2月

2008年2月23日

練馬の貸出履歴保存一件、回答書

 先の練馬区立図書館での貸出履歴保存の一件について、 図書館問題研究会から練馬区立図書館へあてた質問の回答書が図書館問題研究会のHPに掲載されていました。

練馬区立図書館貸出し履歴保存問題速報 2008年2月22日掲載
http://www.jca.apc.org/tomonken/

練馬区立図書館の貸出履歴システムに関する問い合わせについて(回答)
http://www.jca.apc.org/tomonken/nerima.html

 蔵書の切り取り問題に悩んだ挙げ句の措置だったのであろうと言うことは十分理解できるものの、<実効性はないだろうし、その一方で、 貸出履歴の流出の可能性を高めただけ>という業界人の観測を裏付けるような回答になっています。

Q:「汚破損が発覚した[場合?]、これから貴館ではどのような措置を採りますか。具体的にお答えください。」([ ] 内は引用者で補っています)
:「直前の利用者に対して貸出時の資料の状態と汚破損について確認し、 汚破損をしたと利用者が認めた場合、弁償手続きを行います。」

 この措置の実効性のポイントは、つまり「直前」を確定することにあるわけでして、 そのためには貸出と返却のたび毎に汚破損の状況を必ずチェックしておかないと「その本が汚破損状態で返却された直前の利用者」 を特定できないが、そんな作業は事実上できないというのが現実的なネックになっています。(逆に、 それができるほど暇な図書館なら汚破損もそれほど多くはない。)聞かれても「私が借りたときには既にページが切り取られてましたよ」 と言えばそれですんでしまいます。。。と書くと「おまえは市民を信用しないのか!」と言う人がいたりするんですが、ここ数年、 公共図書館の本の汚破損を扱った新聞記事が何度も出ていることを思えば、それが実態ですよというところから話を始めるよりないわけです。 最近もこんな記事↓がありましたしね。

本や雑誌はみんなの財産 北勢の図書館でページ切り取り多発
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20080216/CK2008021602087821.html


Q:「警察等による貸出記録の閲覧・提出要求について」
A:「従来どおり、法に基づく請求でない限り、一切の情報を提供しません。」

 これは刑訴法に基づく「捜索差押許可状」(所謂「捜査令状」)や「捜査関係事項照会書」による請求を想定しているのでしょうが*、 履歴を保存していなければ提供しようもなかったところが提供できるようになっているわけですから、 やはり流出リスクを増やしているということになります。

*吉本 紀「照会書」や「令状」 に出会ったら(1)~(5) (こらむ図書館の自由)
http://www.jla.or.jp/jiyu/column01.html#199202
http://www.jla.or.jp/jiyu/column01.html#199203
http://www.jla.or.jp/jiyu/column01.html#199205
http://www.jla.or.jp/jiyu/column01.html#199209
http://www.jla.or.jp/jiyu/column01.html#199301

 この辺り、こうした「図書館の自由」 の原則に基づく発想を<古い><昔の基準を引きずっている>とする批判の論調がネットでは見られますが、「9・11」 以後のアメリカ合衆国で起こっている事態として現在的な問題なんですけどね。「WEB2.0」はそういう社会性・ 歴史性をどう媒介しているんでしょうか? ネット論議を見る限りではどうにも読み取れません。


 まぁそれにしても、、、なんとかならないですかねぇ、汚破損問題。
 どうせ本にICチップを仕込むんだったら、一葉毎に管理させて切り取られたら日付時間情報と共に記録する、 ついでにGPSとも連動させてどこで切り取られたかも記録する、ってのはどうでしょうかね? え? コスト? 新たな個人情報保護の問題が?  いや、そこは、それ、あれです。。。そもそも、こんなしょーもないことをする人が少なからずいる社会が悪いのである、と。

2008年2月11日

日経連載<変わる図書館>完結

 開始記事を書いてしまってたので、 完結記事も書いておかなくては。。。

 日本経済新聞で珍しく図書館をとりあげた連載が、先週末に完結していました。
 日経の短期連載コラムではいつものことですが、掲載日が必ずしも連日ではなく間隔もまちまちで(この連載では、 月火水月水月水金の順で掲載)、随分と戸惑わされますが、まぁ完結のときだけは明示してくれるのがせめてもの救いです。
 掲載日と表題は以下。

広角鋭角 第29 集 変わる図書館
(日本経済新聞 夕刊連載)
1.財政難でも理想追う/「民間任せ」見直す動きも 2008 年1 月21 日(月)
2.変わるビジネス支援/情報拠点 高まる存在感 2008 年1 月22 日(火)
3.郷土情報のデジタル化/参加型の歴史・文化事典 2008 年1 月23 日(水)
4.ネット情報を後世に/サイト収集・保存 課題山積 2008 年1 月28 日(月)
5.団塊世代に執筆指南/仕事の経験、地域に橋渡し 2008 年1 月30 日(水)
6.高齢者向けサービス/施設に出向き「思い出語り」 2008 年2 月4 日(月)
7.モラル低下に悩む/悪質な破損本 展示し訴え 2008 年2 月6 日(水)
8.委ねられる閲覧制限/「知る権利」「人権」に揺れる 2008 年2 月8 日(金)

 2~6が 『これからの図書館像』(文部科学省 平成18年3月)でも言及している具体的なサービスの形のレポートで、 残りが経営上の現在的課題というところですね。全8回という構成でのテーマの配分としてはまぁバランスのとれた形かと思えます。 正直なところで言えば、もう少し回数を増やして幅広くサービスのバリエーションを示して欲しかったところではありますが。

 日経がこういう特集を組んだ割には、ビジネス支援とかその周辺一辺倒になっていないのが面白いと思いました。ただ、 もう少しつっこんだ記述がほしかったような気もしてはいます。まぁ一般向け特集ならこんなところかとも思うのですが、例えば委託について、 同紙の博物館・美術館問題の一連の特集では、新たに受託に参入しようとした企業の<既にかなり経費を削った運営になっている。 これ以上の合理化は人件費しかない。再考が必要。>といった趣旨の証言も引き出していたわけですが、このシリーズでは、 そこまで踏み込んだ言及にはなっていません。また最終回の「図書館の自由」を扱った「委ねられる閲覧制限[の判断]」という視点も、 なぜ閲覧制限をしてはならないのか、というところの押さえを十分にせずに現象を追っているので、 なんだか緊張感のないぼやけた記述になってしまっていますよね。
 因みに、1回目の記事でICタグを使用している受託企業の発言で、 現状ではICタグを貸出処理や盗難防止などのレベルで運用しているとした後で「既存の利用法に加え、 別の新しい活用法もあるのではないかと模索している」とあるのは、 先月ネットで話題になった<○○を借りたあなたにお奨めの本はこれです>機能のことを言っているのでしょうけれど、 このあたりをもっと突っ込んだ記事にしてくれると丁度よかったのにと思いました。

学校司書16万5500円!

(一部修正して再アップ)

いくつものブログやMLで事前に紹介されていましたが、一昨日放送のTV番組で学校司書の仕事ぶりが紹介されていました。

あしたをつかめ平成若者仕事図鑑
No.151 学校司書 原田悠紀「本の魅力を伝えたい」

http://www.nhk.or.jp/shigoto/zukan/151/top_2.html
NHK教育 2008年2月9日22:00~22:25
再放送 2月14日(木)19:00~19:25

 学校司書として図書室に常駐する26歳の方の仕事ぶりが紹介されていました。読書案内・レファレンスに応える姿や、 ブックトークの試行錯誤の中で子どもを本と結びつける様子(「再現映像」っぽい演出ですが*)が生き生きと描かれていました。 授業との連携も描かれているとよかったなとは思いましたが、「子ども読書」が大きなキーワードになる時代ですから、 30分足らずの番組ではそこへ集中するという判断もありなのでしょう。

* 最近なんだかドキュメント番組の筈なのにどうも演出が強い手法が目立ちます。 と言うか、それが気になるのは年齢のせいでしょうか


 こうした学校司書さんの活躍ぶりについては各所で他の方が触れて下さるでしょうから、ここでは遠慮しておいて、ここでは「ああ、 やっぱり非正規なのね」というところで触れておきます。


 この番組は初めて見たのですが、最後に「この仕事」の紹介をするところがあって、どうやったらなれるかとか、 初任給はとかが紹介されているのですが、「収入の目安」というところで画面に大きく出されたのが、

16万5500円

という数字。「ああ、これは月給としてはうちの嘱託さんと似たような数字だな、やっぱり」と今更ながら暗くなりました。つまり、 岡山は学校司書配置で有名なところだけれど、でもやっぱり、この学校司書さんも嘱託扱いなんだ、と。
 で、「月給ベースで示されても、<収入の目安>にはなってないんですけど…」とも。
 つまり、正規か非正規かでボーナスの有無やあっても支給額の差が大きいので、年収ベースでは大きな格差が生まれます。 これは情報番組なんでしょうから、嘱託とか正規とか示しながら、年収ベースで「収入の目安」 を示してもらわないと情報としては不正確ということになりますよね。

 念のため岡山市のHPをチェックすると

市職員給与などの状況
http://www.city.okayama.okayama.jp/soumu/jinji/kyuyo-kouhyo/kyuuyo-kouhyou17.pdf

があり、そこでは

職員(一般行政職)の初任給の状況(平成17年4月現在)
大学卒(初任給)   178,600円
   (採用2年後) 204,800円

ということですので、紹介された学校司書さんは嘱託として雇用されているということでしょう。 ここに示されただけでも採用2年後の昇給はかなりありますが、嘱託さんなら昇給はないでしょうから、 紹介されていた26歳の方ならすでに月収ベースでも格差が大きくなっているでしょう。先に触れたボーナスの有無という格差もありますから、 正規と非正規の年収格差はかなり拡がるのが目に痛いところです。

 ところで、上記のこの番組HPでは不思議なことに「嘱託」という言及がありました。 なぜアナウンスや画面の文字がなかったのでしょうね?

◇収入のめやす
 岡山市の場合、165000円です。(嘱託職員の場合)
http://www.nhk.or.jp/shigoto/zukan/151/top_2.html
 ※ 放送された画面では、金額だけ「16万5500円」(上記と500円違いますが)で「嘱託職員の場合」という記載やアナウンスはなし)

 NHKさんも、「仕事図鑑」と銘打つのならやはり月収ベースじゃなくて年収ベースで表示しましょうよ。
 それから、「仕事」と言ってもいろいろあるわけですけど、基本的にフリーで請け負うことになる仕事なのか、雇われる形でする仕事なのか、 後者の場合、正規・非正規の関係では労働市場はどういう状況なの?ということも示して欲しいですよね。そうでないと、「あしたをつかめ」 と言われても「つかむあした」が見えてこないわけで。。。この番組を見て自分の進路を探る立場からすると、情報として不正確・ 不適切すぎますよね。

 

2008年2月10日

「図書館は知のセーフティネット」と橋下知事は言っているが

 2月4日に新しい大阪府知事の橋下徹さんが、<図書館以外の大阪府施設はすべて不要>という趣旨を述べていたものの、

 
「図書館以外は不要」橋下氏、大阪府施設の廃止・売却検討
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080205-OYT1T00081.htm
橋下新知事、「図書館以外は不要」 府有施設必要性検討
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802050097.html

 なぜ、図書館だけは不要ではないのかという説明は、新聞記事や解説記事の中でも一切なく、大阪に限らず図書館関係者も「?」状態だったわけですが、2月8日の大阪ローカルのテレビ番組で、橋下さんが司会者からの「なぜ図書館だけは残すのか?」という質問に答える形で「[図書館は]知のセーフティネットだから当然残す」旨を述べていました。

かんさい特集「新知事・市長に問う 大阪の、これから」
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=200&date=2008-02-08&ch=21&eid=57674

 もっともそれ以上の言及はなく、具体的なイメージまではつかめませんでした。
 その場には前鳥取県知事の片山善博さんも同席していたのですが、片山さんほどには明確な図書館像を示したわけでもないので、単なる印象レベルの認識であるのかもしれません。

 この件に限らず大きなアドバルーンを上げるのは、橋下さん流の交渉術であるようです。今後の赤字垂れ流しを回避する意味で非効率・非主流施設の売却はオーソドックスな経営再建策の第一歩でしょうけれど、「廃止・売却」の検討対象となっているドーンセンターも「セーフティネット」だと思うんですけどね。この辺の切り分けがよくわかりません。「図書館だけは残す」その理由の由来次第では、なんだか変なことになりそうです。

(追記)
この番組の該当の部分がYouTubeにアップされていました。

橋下知事よく言った2/6『NHK激闘篇』
http://jp.youtube.com/watch?v=6aJURSVKM3A&feature=related
(※ この表題で「2/6」とあるのは「2月6日」ではなく、6分割の内の2番目という意味ですよ(^_^;)

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