「闘病記文庫」と「健康情報棚プロジェクト」
新着の「出版ニュース」2005年7月中旬号のコラム「ブックストリート/図書館」で西河内靖泰さん(図書館問題研究会)が、6月16日に都立中央図書館で開設された「闘病記文庫」(約1000冊)を紹介しています。
約2年前の「みんなの図書館」2003年9月号の特集「カラダと病気の情報を探す」は、闘病記の情報を探す人(患者やその家族)のための情報提供にかかわるもので、老生も鮮烈な印象で読みました。公共図書館の現場では、そうした資料要求をよく受けるのですが、今現にある検索方式やツールでは対応しずらいもので、心苦しい思いで不十分な対応に終わるのが通例でした。あるいは「通例」に慣れてしまっていたとも言えます。老生も、癌の闘病記なら、通常はエッセイ・手記になるところを癌の分類に移して棚に並べるという程度のことはしていましたが、難病全般ともなるとうまく対応できずにいました。最近でこそ、目次や内容紹介の電子化が進んできたことから、なんらかの検索で目的の闘病記を探し当てる可能性も増えてきましたが、闘病記に多い自費出版となるとそうした目次データの電子化の埒外となることから、やはり大きな壁が立ちはだかる課題であり、課題として手をこまねいている状態の「課題」でした。そこへ投げられた一石がその特集であったという気がします。
西河内さんによれば、今回の「闘病記文庫」は、この特集をきっかけに発足した「健康情報棚プロジェクト」がその「実証実験」として寄贈した本によって実現したとのことです。また、この特集を中心に単行本にまとめられた同プロジェクト編『からだと病気の情報をさがす・届ける』(読書工房、2005年5月刊)も紹介されています。
「図書館は、資料・情報を提供することで人びとの役に立つ機関であることを、私たちは、忘れてはならいのだ。」と西河内さんは結んでいます。たしかに、「図書館が役に立たない」から、自前で検索ツールの作成を始めた人が現にいて、その取組がこうしたプロジェクトの基礎におかれているということを、「私たちは忘れてはならない」のですね。
ところで「特定の著者の著作を廃棄することで図書館は人びとの役に立つ」と思ったのかどうか、とにかくそのような実践を行った図書館員を被告とする裁判の判決がもうすぐ出ます。
来月のこのコラム、西河内さんが言及するのは多分この判決についてですね。西河内さん独特の、歯切れのよい指摘を期待します。
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