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2005年5月25日

井上さんのコラムに

 昨日紹介の井上靖代さんのコラム(「図書館雑誌」2005年5月号)の記述で少々気になるところがありました。

 井上さん曰く

今回,瑞雲舎が復刊した「ちびくろさんぼ」をなつかしむのもよい。だが,図書館員にとっては,資料選択や提供について新しい側面をもたらし図書館の存在意義を考えさせる資料だった,と再認識する復刊でもある。

 と、これは確かそうだと思うのですが、続けて、

「ちびくろさんぼ」論争以降,図書館は閉鎖空間ではなく,国際社会と連動し日々成長する場との認識は,多文化サービスの広まりとなって現れている。

 って、そうですか?

 多文化サービスの広まりは、やはり1990年の入管法改正によって、かつて日本から南米等へ移住した人たちの子孫が合法的に単純労働者として日本国内で働けるようになり、実際そうした人たちの来日が飛躍的に増加したことが直接の契機でしょう。

 それまでのように、韓国及び朝鮮籍の人と中国籍の人とで在住外国人の9割以上を占めるような状況が続いていれば、図書館での多文化サービスの広まりはもっと鈍いものになっていた筈です。

 「認識の広まりが、多文化サービスの広まりにつながった」という井上さんの意図はわかるような気はしますが、この部分ちょっと書き急ぎすぎていると思います。

 因みに、井上さんは更に続けて、

また,この本の絶版・復刊は出版流通ビジネスの政治的経済的思惑と連動し,図書館に課題をもたらしつづけていることを示している。

 ともお書きです。これも少し「書き急ぎすぎ」の感ががあります。89年頃の絶版以後これまでの『ちびくろさんぼ』(海賊版やリメイクを含む)は、むしろ大きな経済的リスクを背負った出版だったと言えますから。ただ、『シナのごにんきょうだい』や『ちびくろさんぼ』の様子を見て、他にこういうおいしい出版ネタはないかと物色を始めた出版者は確実に存在するような気はしますね。

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